男性的な町という印象をまずこのジェノヴァは与えてくれる。
なにもリグリア海が荒れ狂う海という雄々しいイメージではないのであるが、町の地形、著しく起伏が激しいことなどがそう思わせるのであろう。海辺が延々とどこまでも広がるようなのどかさはなく、大型船の並ぶ巨大な港に目が留まり、それが途切れると断崖絶壁がどこまでも続く、まるで要塞のような風貌が窺えるのである。
オペラ「シモン・ボッカネグラ」はこの要塞のような町で展開していく物語である。
「リゴレット」「トロヴァトーレ」「椿姫」を世に送り充実期に入ったヴェルディが、いま一度、建国への思いを込めたとされるこの作品。ピアーヴェの台本を、後年にボイトが手を加えることで初演の失敗を取り戻したとされるが、芳しくない評価を20年以上の時間をかけて改訂することになったヴェルディにとっては実に愛着のある作品と言えるであろう。
ジェノヴァを訪れてこの作品を辿ることを思えば、まず海からはじめることになる。
プロローグより海の様子や、実際存在したと言われるシモンの総督になる前の生業が海賊(私掠船船長)であって、オペラのプロローグばかりに留まらず全幕を通して雄々しい港の雑踏や波音、寒い季節に現れる霧、潮風までを盛り込んだヴェルディの音楽にジェノヴァそのものを感じることができる。いまも残るカリカメント広場(Piazza Caricamento)を背に、前方に広がる海を眺めると物語の13世紀に自分がタイムスリップしたかのような気分になるのだから不思議なものである。
また、ヴェルディはこのオペラの中に作曲家自らの思いも封じ込めているように思う。
このシモンという人物像を浮き上がらせるためにはこの町の丘にも上らなければならない。実際にオペラの中に登場するグリマルディ邸(Palazzo Grimaldi)、サン・ロレンツォ大聖堂(Cattedrale di San Lorenzo)と大聖堂広場、ドゥカーレ宮殿(Palazzo Ducale)、シモンが毒を盛られて終幕となるサン・ジョルジョ宮殿とゆっくりと自分の脚で歩いても20分もあればすべてを巡ることのできる距離感である。
また、実際オペラには出てこないのだが、シモンの娘アメーリアが暮らしていたと推測されるカステレット地区があり、スピアナータ・カステレット(Spianata Castelletto)というこの一角より眺める眺望こそ孤独であったアメーリアの心情を包み込むに相応しい情景であったようだ。そこも前出のオペラの場場より、30分圏内にあるところである。
1860年頃、すでにこの作品の初演を終えたヴェルディはジェノヴァの町を訪れている。その時の経験が後の改訂に影響を与えたことは間違いないだろうが、シモンの存在していた13世紀、ヴェルディの歩いた19世紀、その両時代を思いながらそぞろ歩くことは中々言葉では言い表せない時空の旅をしているようである。
堂満尚樹(音楽ライター)
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【鑑賞予定公演】
ヴェルディ《マクベス》 -新制作-
◆指揮:A.ソディ ◆演出:M.マルトーネ
◆出演予定:L.サルシ、V.ゴイコエチェア、A.ディ・マッテオ、A. ポーリほか
フィレンツェ歌劇場 10月14日(火)20:00開演
●ヴェルディ《リゴレット》
◆指揮:M.アルミリアート ◆演出:M.マルトーネ
◆出演予定:A.エックバート、V.グリゴーロ、R.ミューレマン、M.ベッリほか
ミラノ・スカラ座10月16日(木)20:00開演
●ドニゼッティ《連隊の娘》
◆指揮:E.ピド ◆演出:L.ペリー
◆出演予定:J.D.フローレス、J.フックス、P.スパニョーリ、B.フリットリほか
ミラノ・スカラ座10月17日(金)20:00開演
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*※上記のほか下記の公演も鑑賞可能です。(別料金)
ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団コンサート
指揮:R.シャイー ソリスト:C.カルク、C.マルトマン
曲目:シェーンベルク《ワルシャワの生き残りOp.46》
マーラー《リュッケルト歌曲集》 J.S.バッハ《6声のリチェルカーレ》(ヴェーベルン編曲)シェーンベルク《管弦楽のための変奏曲 Op.31》
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